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Taste01/センスとは01

Taste01/センスとは01

10.05.2016.

センスが良いとか悪いとかよく聞くけど、センスというのは膨大な数の調査と経験と実験に基づいて徹底的に計算されたフェティズムであると考える。
よくある「なんとなくカッコいい」とか「おしゃれ」とか「カワイイ」っていうのは全然表面的で本質にはたどり着いていない。

 

単に「自分が好き。これは嫌い」、それだと子供がする言い訳と変わらない。
その「好き」「嫌い」という抽象的な概念をより具現的に分析する必要がある。
そしてそこに強烈な過去の経験や、膨大な調査と分析、自分自身の取捨選択力の向上的努力があってこそ初めて「センス」になり得る。
かの記号論者ロラン・バルトが「映像の修辞学」において「イメージはシニフィアン(記号表現)とシニフィエ(記号内容)によって表される」と説明するように、美術作品やデザインにも必ず表現しようとする手段と表現する内容は無数に存在する。

 

生まれ持ったセンスというのはあまり信じていない。
学んで努力して磨き上げられたセンスこそ、多角的な概念が入り込む事によって見るものを魅了すると考える。

生まれ持った才能のまま「なんとなくこれで」な感じで出来た物に深みや魅力を感じた事はない。
努力して作る(本人が努力と思ってない場合もあるが)事を公にするのをカッコ悪いと思う人たち(期末テストの朝に「やば~。おれ全然勉強してないわ~」と嘯いて結果98点を叩き出すような)は存在するが、そのような人達の作品を見ても「努力してないフリ」はしても作品の中にそれはいくつも垣間見え、嘘はすぐに見破られる。

 

自分のスタイルを確立する為に、無数のシニフィアンとシニフィエの組み合わせを学び、多大な実験と考察を惜しまず、新たなスタイルを確立する為に何かを破壊して超越しようとする部分にセンスを感じる。
そしてただやたらめったら破壊すれば良いという物ではなく、そこには過去の美術やデザインの歴史を学び、踏まえ、自らの物として昇華させる。それをコントロールする能力に魅力を感じる。

 

「コントロールされた狂気」が人間が創りだす物の中で最も美しいと自分は考えている。

 

話は変わって、最近色んなプライベートな事を通じてスマートフォンを代表とする通信電子デバイスにいかに時間を奪われているかを真剣に考える。
ついつい暇な時間があるとスマホを触ってみたり、ひどい人になると恋人や友達、家族と一緒にいる時間もスマホばかりを見ていたり。
自分もプログラミングや3DCADなどテクノロジーの恩恵を大いに受けているのでアンチテクノロジーでは無いが、スマホに自分の人生の時間を奪われるのに少々うんざりしてきた。
情報というのはそんなに頻繁に入ら無くても困りはしない。
スマホの代わりに電子ブックリーダーのkindleを使うことにした。歴史上の才能溢れる先人が書いてくれた書籍をこれだけで読むことが出来る。
そして何よりいい感じと思ったのは「読書しか出来ない」こと。他の機能は無い。

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十数年前に読んで多大な影響を受けた谷崎潤一郎の陰翳礼讃をもう一度読み返しているが、文章の表現が美しい。そして西洋とは全く違う東洋の独自の美学を追求するフェティズムは本当に勉強になるし繊細で美しい。

それには、繰り返して云うが、或る程度の薄暗さと、徹底的に清潔であることと、蚊の呻 (うな)りさえ耳につくような静かさとが、必須の条件なのである。私はそう云う厠にあ って、しとしとと降る雨の音を聴くのを好む。
殊に関東の厠には、床に細長い掃き出し窓 がついているので、軒端や木の葉からしたゝり落ちる点滴が、石燈籠の根を洗い飛び石の 苔を湿おしつゝ土に沁み入るしめやかな音を、ひとしお身に近く聴くことが出来る。まこ とに厠は虫の音によく、鳥の声によく、月夜にもまたふさわしく、四季おりおりの物のあ われを味わうのに最も適した場所であって、恐らく古来の俳人は此処から無数の題材を得 ているであろう。
されば日本の建築の中で、一番風流に出来ているのは厠であるとも云え なくはない。総べてのものを詩化してしまう我等の祖先は、住宅中で何処よりも不潔であ るべき場所を、却って、雅致のある場所に変え、花鳥風月と結び付けて、なつかしい連想 の中へ包むようにした。これを西洋人が頭から不浄扱いにし、公衆の前で口にすることを さえ忌むのに比べれば、我等の方が遥かに賢明であり、真に風雅の骨髄を得ている。
-谷崎潤一郎 陰翳礼讃より

彼の東洋美を徹底して追求するフェティズムもまた、コントロールされた狂気であるとひしひしと感じる。

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